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日本のいじめ件数が過去最多!海外のいじめ対策との違いは?

2023年11月01日

昨年、文部科学省から発表された2021年度のいじめ件数は、61万件を超え、過去最多となりました。日本で「いじめ防止対策推進法」が施行されてから10年以上経過してもなお、いじめによる自殺や不登校などの「重大事態」の件数は増え続け、2021年度は過去2番目に多くなっています。そこで今回は、日本のいじめ対策と、海外で行われているいじめ防止に関する取り組みについてご紹介します。それぞれの取り組みを知ることで、いじめの防止・対策について考えるきっかけにしていただければ幸いです。

「いじめ防止対策推進法」とは?

「いじめ防止対策推進法」とは、2013年に公布された日本初のいじめに関する法律です。この法律は、いじめの定義を「被害を受けた子どもが心身の苦痛を感じているもの」と明確化し、いじめによる自殺や不登校などの「重大事態」が起きた場合には教育委員会や学校が調査を行い、事実関係を保護者らに伝えることを義務づけました。

 

学校の教員や周囲の大人が、その行為自体をいじめとは捉えなかったり、行為をした子どもがいじめのつもりではなかったりするからといって、「これくらいは大したことではない」「これはいじめではない」と見過ごしたり、見逃したりすることのないように、被害を受けた子どもの立場に立って判断しようと定義されました。

 

しかし、法律施行後も深刻ないじめはあとを絶たず、教育委員会や学校の対応が遅れたり、重大事態として対応しなかったりしたことで、子どもたちが亡くなる事案も相次いでいます。なぜ法律ができた後も、深刻ないじめ事案が後を絶たないのでしょうか。

 

総務省が2018年に行った、「重大事態」の調査報告書の分析では、

 

▼学校側がいじめと認めない認知の問題(56%)

▼学校内の情報共有の課題(61%)

▼担任任せになるなど組織的な対応の不足(64%)

などが指摘されています。

 

法律では、被害を受けた子どもが苦痛を感じていれば「いじめ」となるにもかかわらず、なぜ認知しないのか。学校側がいじめを認め、情報共有をすることが難しい背景には、構造的な問題があるという声もあります。これまでは自治体や教育現場に委ね、事後的な対応にとどまっていた国も、ようやく教育現場への関与を強め始めています。

 

文部科学省は、ことし4月から、「重大事態」の詳細な報告を自治体から求め、学校側と保護者との関係がこじれたり、調査が難航したりした場合には、「いじめ問題アドバイザー」を設定し、調査が適切に進められるよう、必要な助言や支援を行うことになりました。

 

「いじめ」は日本特有のものではなく、世界各地で発生し、重大な問題として認識されています。ここからは、海外のいじめ対策についてご紹介していきます。

フランスのいじめ対策

フランスでは、「いじめ行為は犯罪」として認識されています。2022年3月の法改正で、嫌がらせを受けた被害者が自殺または自殺未遂をした場合、最高で懲役10年、罰金15万ユーロ(約2370万円)が科されることになりました。さらに8日間以下の完全な就学不能を引き起こした場合、3年以下の懲役および4万5000ユーロの罰金が科され、8日間を超えて完全に就学不能となった場合は、5年以下の懲役および7万5000ユーロの罰金が科されます。

 

さらに、ことしの9月から、「他の生徒の安全や健康リスクをもたらす生徒の意図的かつ反復行為」を正式に確認した場合、校長は「これを終わらせるあらゆる教育措置を実施する義務がある」とし、自治体首長に「加害者生徒を学校から退学させ、自治体内の別の学校に登録する手続きを要請できる」ようになりました。これまでも、被害者の要請があれば転校命令を出せましたが、9月からは校長と自治体首長の判断で強制的に転校させることが可能になりました。

 

背景には、ネットいじめの拡散により、いじめによる生徒の自殺が繰り返され、その深刻さが認識されるようになったことがあげられます。フランスのアタル国民教育相は、今秋の新学年からいじめ撲滅を最優先課題と強調し、欧州連合(EU)議長国フランスはEU全体の優先課題とすべきと主張しています。

 

ほかにも、フランスではさまざまないじめ対策が拡充されています。ハラスメントおよびサイバーハランスメント防止のプログラムを初等・中等教育・高等教育で展開し、生徒を保護する専門家とスタッフのコミュニティーを形成。いじめの状況に効果的に介入し、保護者や学校、教育支援団体、健康や市民権を守る教育環境委員会を動員して対策実施の進捗状況を監視しています。また、いじめ専用の情報共有プラットフォームも提供し、教育実習生の体系的な研修を皮切りに、すべての教職員が教育現場でのいじめと闘う訓練を受けることが義務づけられています。

 

世界で実践されているノルウェー発祥のいじめ防止プログラム

いじめ対策は、日本やフランス以外でも、世界各国で解決すべき重要課題として、この10~20年で劇的に関心が高まっています。最後に、世界20か国以上で導入されたノルウェー発祥の「いじめ防止プログラム」をご紹介します。

 

このプログラムは、授業の中でいじめについての知識を教えたり、考えたりするだけではなく、年間を通じて授業以外の場でも行われ、学校全体の雰囲気や風土を変えようというものです。

 

具体的には、以下のような取り組みが行われます。

 

・教師や保護者、生徒などから構成されるいじめ予防委員会を組織する

・いじめについて子どもどうしで話す時間を定期的に設ける

・いじめについてのアンケートの実施する

・子どもに関わるすべての人がいじめへの介入方法を学ぶ など

こうした取り組みを教師たちだけで行っていくのは難しいため、このプログラムでは、2年間の専門的な訓練を受けたトレーナーがいじめ予防の方法を指導することになっています。

 

指導を受けるのは教師だけではありません。保護者やカフェテリアの従業員、校務員まで生徒と関わるすべての人に参加してもらうことが、学校全体の空気を変えるうえで重要なポイントだといいます。このプログラムは、これまで多くの検証が行われ、その効果が裏付けられてきました。身体的ないじめ、性的ないじめ、ネットいじめなどさまざまな種類のいじめに効果があることも実証されています。

 

以上、今回は日本と海外のいじめ対策をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。日本に比べて海外では、いじめに対して多角的にアプローチをしている印象を受けます。さまざまないじめ対策を知ることで、私たち一人一人がいじめの防止・解決策について考えるきっかけになりますように。

 

≪おまけ≫いじめ相談窓口

文部科学省ホームページには、いじめで困ったり、友達や先生のことで不安や悩みがある場合などに電話・SNS等で相談できる窓口を掲載しています。

 

子供のSOSの相談窓口 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm

 

参考:東洋経済ONLINE、NHK みんなでプラス

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