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春休みがチャンス!夜9時就寝で「賢い脳」を育てよう
2025年03月05日
皆さんは、「日本の子どもの睡眠時間は、世界で一番短い」ことをご存じでしょうか?
文部科学省の調査結果[*1]や、OECD(経済協力開発機構)の国際比較調査[*2]などで、繰り返し指摘されている事実です。
特に、小学生から高校生にかけての睡眠不足は深刻で、心身の発達に悪影響を及ぼすだけでなく、学力や意欲の低下にもつながることが分かっています。しかし、子どもの睡眠不足は、決して彼らだけの責任ではありません。背景には、共働き世帯の増加や、夜型の生活習慣、スマートフォンやゲームの普及など、現代社会ならではの要因が複雑に絡み合っています。そこで、注目したいのが春休みです。学校の授業がなく、生活リズムを整えやすいこの期間は、子どもの睡眠習慣を見直す絶好のチャンスと言えるでしょう。
このコラムでは、睡眠不足が子どもに与える影響や、睡眠習慣を改善するための具体的な方法についてご紹介します。特に、夜9時就寝を推奨する理由や、質の高い睡眠を得るためのポイントなど、保護者の方にとって役立つ情報を盛り込みました。ぜひ、お子さんの「賢い脳」を育むために、このコラムを参考に、春休みの間に睡眠習慣を見直してみてください。
注釈
*1:文部科学省「平成28年度全国学力・学習状況調査」 *2:OECD「PISA 2018 結果の概要」
ダラダラとゲームをやって宿題が終わらずに寝るのは深夜。夜9時すぎに塾から帰ってから夕飯、塾の復習を夜遅くまで頑張る……。現在の日本の子どもは、海外の子どもと比べると、圧倒的に睡眠時間が少ない傾向にあります。教育熱心なあまり、睡眠時間を削って勉強させているご家庭もあるかもしれませんが、深夜に机に向かわせても効果はありません。なぜなら、賢い脳をつくるには、十分な睡眠が必要不可欠だからです。脳が未熟だと、どんなに勉強に励もうと、その効果は限定的になってしまいます。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、子どもに必要な標準睡眠時間について、小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜12時間の睡眠時間を推奨しています。しかし、日本人の睡眠時間は世界的に見ても短い傾向にあり、特に中学生から高校生にかけて睡眠時間が短くなることが報告されています。
OECD(経済協力開発機構)の2021年版の調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分。33カ国の中で最も短く、全体平均の8時間28分よりも1時間も少なくなっています。その傾向は子どもにも表れていて、青少年(9~18歳)を対象とした調査でも、日本人の平日の睡眠時間はヨーロッパ諸国と比べて1~2時間少なくなっています。日本の子どもは世界で一番眠れていないのです。
現代の日本の子どもは、塾や習い事、宿題などで忙しい毎日を送っており、就寝時間が遅くなる傾向があります。また、共働き家庭が増えていることも、子供たちの就寝時間が遅くなる原因の一つと考えられます。ほかにも、スマートフォンやゲームなどの普及により、夜遅くまで画面を見ている子どもが増えています。ブルーライトは睡眠を妨げるため、睡眠不足の原因になります。
では、なぜ、子どもにとって睡眠不足が問題になるのでしょうか。それは、脳の発達に関係しています。
そもそも、脳はどのように発達するのでしょうか。脳の発達は大きくわけて3段階あり、順番に発達していきます。
- 0~5歳:生きるための機能を担う「からだの脳」
- 1~18歳:言語、思考、勉強、スポーツ能力に関わる「おりこうさんの脳」
- 10~18歳:論理的思考、社会性、感情の安定を担う「こころの脳」
大事なのは、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」を発達させるためには、まずは土台となる「からだの脳」をしっかりつくっておく必要があります。そして、「からだの脳」を育てるために重要なのが、暗くなったら寝る、明るくなったら起きるという睡眠、覚醒のリズムなのです。よい覚醒リズムを体に覚えさせるためには、夜9時に寝て朝6時に起きる習慣を身につけることが重要です。
睡眠不足が子どもに与える影響は、体と心の成長や発達など多方面に及びます。
・学力低下:集中力や記憶力を低下させ、学力低下に繋がる
・健康問題:免疫力低下や肥満、生活習慣病のリスクが高まる
・精神的な問題:イライラしやすくなったり、うつ病などの精神的な問題を抱えやすくなる
子どもにとっての睡眠の重要性を理解しても、いきなり生活スタイルを変えるのは難しいかもしれませんが、いつもより時間にゆとりのある春休みは睡眠習慣を改善するチャンス!以下のポイントを参考に、お子さんの「賢い脳」を育ててみませんか?
塾などで帰宅時間が遅くなる日がある場合は、それ以外の日は夜9時に寝ることを目指しましょう。夕食は軽く済ませ、入浴は寝る1~2時間前に 38度~40度くらいの熱すぎないお湯に入ると安眠しやすくなります。時間がない場合はお風呂を朝に入るようにして、夜8時頃には家族全体で早く寝る雰囲気をつくりましょう。子どもが疲れておらず、眠れない場合は、家族でマッサージやストレッチをすると、適度に疲れて眠りやすくなります。
【NG行為】
・寝る前に子どもにスマホやゲーム、YouTubeなどを見せる、使わせる
・子どもを寝かせた後、親がテレビやYouTubeを見るなど、親だけが起きている
子どもの寝つきが悪い場合は、親も一緒に布団に入って寝ると、子どもがストンと寝る場合があります。できれば、親も子どもと一緒に睡眠習慣を整えましょう。
子どもは成長過程にあるため、大人よりも長い睡眠時間が必要です。睡眠中の成長ホルモンの分泌が骨や体をつくり、身長を伸ばすためです。また、子どもは睡眠サイクルが確立していないため、大人ほど効率よく眠れないことも理由のひとつです。
寝ている間、脳の中では、その日に得た知識や情報の整理整頓と固着が行われています。朝起きたばかりの脳は、前日に学んだ情報がそれぞれのフォルダにしまわれてスッキリしているイメージ。こうした脳の機能を考えれば、塾から帰ってきた子どもに夜遅くまで復習させるのは効果がないとおわかりいただけるでしょう。さっさと寝て、朝起きてから学習するほうが理に適っているのです。
世界一睡眠時間が短い日本の子ども。その原因は生活習慣や社会文化、情報過多など多岐にわたりますが、原因の多くは大人にあるとも言えます。お子さんの心身の健康と成長のために、大変かもしれませんが、まずは春休みに家族で一緒に「夜9時就寝」に取り組んでみてはいかがでしょうか。きっと、私たち大人にもいい影響があるはず!
参考:プレジデントFamily