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お菓子や孫悟空の名前がついたものも!意外と知らない【台風】のこと
2023年05月03日
日本では、毎年のように各地で台風被害が報告されています。日本付近で一年間に発生する台風の平均は25.1個にもなり、台風は私たちの暮らしに最も影響を及ぼす気象現象のひとつといえるでしょう。そこで今回は、日本で暮らしている限り避けては通れない「台風」に焦点を当て、発生する仕組みや特性などをご紹介していきます。
まずは、台風とは何かを確認しましょう。
台風とは、熱帯地方で発生した低気圧がとても強くなったものです。熱帯地方で発生した低気圧のことを熱帯低気圧と呼び、正確な台風の定義は以下のとおりです。
「熱帯低気圧の中でも、中心で吹く風が1秒間に17.2m以上の速さで、物を飛ばしてしまうくらいに強くなったもの」
つまり、熱帯低気圧か台風かは、風の強さが基準です。そのため、風が弱くなると台風ではなくなり、熱帯低気圧に戻ります。
台風の風速基準は秒速17.2mです。中途半端な数字に感じると思いますが、この基準にはきちんとした理由があります。基準となる風速は、これより風が強くなると船が前に進めなくなり、沈んでしまう危険があるという船乗りたちの経験から決められたといわれています。
台風がどんなものか理解したところで、台風が発生する仕組みを順にみていきましょう。
1.海水が水蒸気になる
海水面にある水が、太陽の熱によって温められて蒸発し、水蒸気に変わります。
2.水蒸気が上昇し、上昇気流ができる
水蒸気は、空気より軽いので上昇していき、上昇気流を作ります。
上昇気流が生じると空気が上に昇って地面や海面を押す力が弱くなるため、気圧が下がります。この状態を低気圧といい、熱帯で生まれた低気圧は、熱帯低気圧と呼ばれます。
3.積乱雲ができる
上昇した水蒸気は、上空で冷やされて大きな積乱雲を作ります。
地上付近よりも上へ行くほど気温が下がるので、水蒸気は冷やされて小さな水滴に変わります。この水滴が集まったものが雲になり、低気圧で急激にできる雲が積乱雲です。
4.雲のうずができる
地球の自転によって発生する力が、積乱雲に働いて雲のうずを作ります。
地球は西から東に向かって自転しているため、地球上では常に風が吹いています。この自転の力が積乱雲に働くと、台風の特徴でもある雲のうずを作ります。
5.熱帯低気圧が台風に変わる
雲のうずが大きくなり、うずを巻いた積乱雲の塊(熱帯低気圧)の中心付近で、風の強さが秒速17.2メートル以上になると、熱帯低気圧が台風に変わります。
台風はどこで生まれるのでしょうか。
日本に来る台風のほとんどは、熱帯地方の海の上、フィリピンやインドネシアの近くで生まれます。具体的な理由はわかっていませんが、台風は海面付近の水温が26℃以上になると生まれやすくなります。平均して水温が26℃以上になる海は、フィリピンと台湾の間あたり、だいたい北緯20度の線より南側です。
いまのところ、台風の発生は熱帯の海に限られていますが、これから地球温暖化が進んでいくと、より日本に近い海でも水温が高くなり、台風が発生するようになるかもしれません。
台風は、海上を進んで日本に近づいてくる間に勢いがどんどん強くなってきます。なぜ台風の勢いが強まるのでしょうか、その仕組みを解説していきます。
低気圧・台風の中では上昇気流が起きており、上昇気流が活発であるほど強い低気圧・台風になります。
1.水蒸気が水に変わる
台風のエネルギー源は水蒸気です。
海水が蒸発してできた水蒸気(気体)は、上昇して上空で冷やされ、水(液体)に変わって雲を作ります。
2.水蒸気が熱を放出
気体から液体に変わるときに、水蒸気は熱を放出します。熱が放出されると、周りの空気が暖められます。
3.上空で冷やされた空気から水蒸気ができる
水蒸気から出た熱で暖められた空気が上昇して上空で冷やされ、また液体に変わり、熱を放出。そして、また水蒸気ができます。
4.水蒸気上昇→冷えて熱を放出のサイクルで上昇気流が活発化
台風が海上を進むうちに、台風の中にある上昇気流が海水面から水蒸気をどんどん吸い上げ、水蒸気が上昇→水蒸気が上空で冷えて熱を放出→周りの空気が暖められて水蒸気ができる→水蒸気が上昇する→それが冷えて熱を放出…というサイクルが生まれることで、台風は強さを増していきます。
5.上昇気流の強まりで台風がさらに活性化
台風の強さを「勢力(せいりょく)」といい、勢力は気圧で測ります。
台風は気圧が下がるとさらに勢いが強くなるという特性があり、気圧の数字が小さいほど勢力が強い台風です。その理由は、気圧が小さいほど空気が軽くなり、地面を押す力が弱まるため、上昇気流が強くなり、先ほどの“水蒸気上昇→熱を放出”というサイクルが繰り返されることで、台風はどんどん強くなります。
こうして、勢力を増す台風ですが、どんな台風でもいつかは衰え、消えてしまいます。
台風は、大量の雨や風としてエネルギーを放出しながら進みます。
そのため、エネルギーを補給し続けていないと台風はどんどん弱くなり、いつかはエネルギーがなくなります。台風は海水面から吸い上げる水蒸気をエネルギーとして強さを増していくので、水蒸気がほとんどない陸に到達すると、だんだんと勢力が弱まって風が弱まり、台風になる前の熱帯低気圧に戻ります。
ところで、天気予報では台風〇号などと呼ばれている台風ですが、固有の名前がつけられていることを知っていますか?
台風の名前は、日本を含む14カ国等が加盟する政府間組織「台風委員会」が名前をつけています。個人名や商標、地名などではなく、中立的で親しみを持つことができる固有名詞から選ばれることが多いようです。選ばれた台風の名前は、各国の伝説にまつわる神様や星座の名前、果物や動物の名前も多くありますが、中にはお菓子の名前や、「孫悟空」を意味する中国語まで、バラエティに富んでいます。天気予報では呼ばれることのない台風の名前ですが、日本に来る台風がどんな名前なのかを調べてみるのもおもしろそうですね。
世界的にみても、日本は台風による被害が多い国です。
台風が日本によく来るのはなぜか、それは台風の進路上に日本があるためです。台風は、フィリピンやインドネシアなど、熱帯地方の海の上で発生します。そこから太平洋高気圧と偏西風に流されて台湾や中国大陸へ向かって進んでいくことが多く、移動する進路上に、たまたま日本があるということです。とくに、沖縄などの南西諸島は、海に囲まれていて水蒸気を補給しやすい点も含めて台風にとっては好立地のため、台風被害を受けやすい地域です。
日本に住んでいる私たちにとって、台風シーズンといえば夏の終わりから秋にかけてですが、実は、海上では台風は1年中発生しています。これは、台風が発生するフィリピン周辺の太平洋上では年中暖かく、大きな季節的変動がないため、年間を通して台風が発生しやすい環境であることが理由です。台風は風に流されて移動するので、秋が近づくにつれて高気圧が日本の東側へずれていくと、台風が日本に近づき上陸しやすい、北上する進路が開かれるのです。
以上、今回は台風についてご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?台風が発生しやすい条件も知ることができたと思います。地球の温暖化が進むと、さらに台風の発生頻度が上がります。台風被害をできるだけ防ぐためにも、地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出抑制に向けて、私たちにできることを考えてみましょう。
参考:科学のはなし、気象庁