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感染症から体を守る!知っているようで知らない【免疫のこと】
2024年01月03日
新型コロナウイルス流行の影響もあり、ここ数年、「免疫力を高める」といった言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。免疫力が低いと感染症にかかりやすくなったり、疲れが取れにくくなったりします。そこで今回は、健康維持に重要な「免疫」についてご紹介します。
免疫とは、私たちの体にもともと備わっている防御システムです。体の表面にある皮膚や粘膜などは最前線でバリア機能を果たし、ウイルスや細菌など異物の侵入を防いでいます。病原体が体内に侵入すると、今度は白血球が中心となって異物を認識し、病原体を食べたり「抗体」という物質で攻撃したりすることにより排除します。
免疫には大きく分けて、生まれつき備わっている「自然免疫」と、感染症を経験することで強化される「獲得免疫」の2つがあります。特徴の異なるこれら2つのシステムが組み合わさることで、効果的に病原体を排除することができます。身体に異物が入るとまずは自然免疫がはたらき、その後獲得免疫がはたらくことが一般的です。
自然免疫は、生まれたときから体にもともと備わっている防御システムなので、「自然」免疫と呼ばれています。自然免疫は、体に異物が侵入しようとすると最初に反応し、異物の危険性にかかわらずとにかく攻撃します。主に白血球の1種である「食細胞」が中心となって病原体を丸飲みにして排除する役割を持っています。
自然免疫は、異物の侵入から反応開始までが数時間と素早く、また相手を限定せず幅広い病原体に反応できるのが特徴です。自然免疫がはたらくと炎症が起こり、発熱や鼻水、のどの痛みなどの症状を引き起こすことがあります。侵入した病原体に自然免疫だけで対処できることもありますが、排除しきれなかった場合には、次に獲得免疫がはたらきます。
自然免疫に関わる細胞には、病原体の情報を取り込み、獲得免疫の仲間である「ヘルパーT細胞」や「キラーT細胞」に伝える役割があります。その情報をもとにして、今度は獲得免疫が対象となる異物に対して攻撃をします。
獲得免疫は、自然免疫で防ぎきれなかった細菌やウイルスに対して反応する、第二の壁のようなものです。一度侵入した異物を記憶して、次に体内に侵入してきた際に攻撃します。獲得免疫にかかわる細胞は以下の通り、それぞれに役割を持ち、互いに連携しながら病原体を攻撃しています。
・B細胞:侵入した異物が危険なものであるどうかを判断する
・形質細胞:B細胞が成熟したもの。抗体をつくって自然免疫の働きを助ける
・ヘルパーT細胞:B細胞とともに、異物が危険なものであるどうかを判断し、攻撃の戦略を練る司令塔の約割
・キラーT細胞:ヘルパーT細胞の指示を受け、すでにウイルスに感染してしまった細胞を破壊する
・制御性T細胞:各細胞の暴走をおさえ、免疫異常を起こさないように調整する
・メモリーB細胞:一度侵入した病原体の情報を記憶し、病気にかかりにくい状態をつくる
獲得免疫は敵を狙いうち攻撃力が高いですが、発動までに1週間程度時間がかかります。この時間のロスを減らすために人間が作ったのが「ワクチン」です。あらかじめ無害化したウイルスを体内に注入することで、実際に感染する前に免疫にウイルスを認識させて攻撃態勢を整えることが狙いです。
獲得免疫はヒトや動物など、高等な脊椎動物のみが持っている防衛機能で、自然免疫の働きをサポートする役目もあるため、獲得免疫を高めることが免疫全体の強化につながります。
免疫力が下がると、風邪やインフルエンザをはじめとするさまざまな病気にかかりやすくなります。では、免疫力をアップさせるにはどうしたら良いのでしょうか?ここからは、獲得免疫(免疫力)を高める方法をご紹介します。
・腸内環境を整える
免疫細胞の約7割は腸内にいると言われています。口から摂取したものは、消化管を通って腸に運ばれますが、その際、良いものも悪いものも一緒くたに運ばれるため、病原体から体を守るために、腸には免疫細胞が多く存在しているのです。そのため、腸内環境を整えることが、免疫力アップにつながるのです。腸内環境を理想的な状態に近づけるには、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品や、キノコや海藻類などの食物繊維を、毎日の食事で摂取することが大切です。
・体温を上げる
免疫が正常に働くのに理想的な体温は36.5度~37.1度だと言われていますが、近年は、平熱がそれ以下だという人も増えています。体温が低いと血液中の白血球のはたらきが弱まり、病気にかかりやすくなります。白血球は血液中を常にパトロールしていて、白血球に含まれるマクロファージという細胞が、病原体を攻撃してくれるからです。
そのため、体温を上げて白血球のはたらきを高めることが、免疫力アップにつながります。毎日30分程度のウォーキングする、入浴時はかならず湯船につかる、白湯を飲むなどを習慣づけるようにしましょう。
・ストレス解消
過剰なストレスによって自律神経が乱れると、白血球のはたらきが弱まり、免疫力が低下します。ストレスが溜まっていると感じたら、適度な運動を取り入れたり、笑顔の機会を増やしたりすることを意識しましょう。声を出して笑うことで、異物を攻撃してくれる免疫細胞の一つである「ナチュラルキラー細胞」が活性化すると言われています。
・生活習慣の改善
獲得免疫は睡眠中に強化されるため、睡眠が十分にとれていないと免疫力が低下します。研究では、平均睡眠時間が8時間以上の人に比べて、7時間以下の人は風邪をひく確率が3倍も上がるというデータも。また、免疫力を高めるには、睡眠の時間はもちろん、質も大切です。朝起きたらカーテンを開け、太陽光を浴びましょう。そうすることでセロトニンというホルモンが分泌され、セロトニンが夜にメラトニンに変化することによって、睡眠を促してくれます。
セロトニンは、ウォーキングやスクワット、サイクリングのような、リズミカルな運動をすることでも分泌されます。適度な運動をすることで、幸福感を高めるエンドルフィンというホルモンが分泌され、同時にストレス解消にもつながります。
また、偏った食生活が続くと、免疫が正常に働かなくなります。主食(お米、パン、麺)、主菜(たまご、肉、魚、豆腐などの大豆製品)、副菜(野菜、きのこ、海藻)をバランスよく取り入れた食事を、1日3食とることを心掛けましょう。
以上、今回は私たちの体を病原体から守ってくれる「免疫」についてご紹介しました。インフルエンザや風邪などにかかりやすいこの時期、免疫力を高める生活を心掛け、元気に受験を乗り切りましょう!
参考:NHK「ニューマニエンス40億年のたくらみ」
やさしいLPS、Wikipedia、Medical Note