KATEKYO知恵袋
「普通」も「特別」もない!人の数だけあるセクシュアリティとは?
2024年10月02日
ニュースやSNSなどでよく見かける「LGBT」の文字。「LGBT」とは、セックスやジェンダーの在り方の分類したなかで特定の性的少数者を指す総称です。今や多くの人が認識するようになりました。
人には、年齢、生活習慣や人生観などに多様性があり、一人ひとりに個性・特徴があります。
多様な「性」を知るうえで、まず理解しておきたいのが「性自認」と「性的指向」の二つの概念です。
性自認とは: 自分自身がどのような性別であると認識しているかです。例えば、自分を男性だと認識している人もいれば、女性だと認識している人もいます。身体的性と性自認が一致しない場合もあります。
性的指向とは: どの性別の人に恋愛感情や性的感情を抱くかです。異性愛、同性愛、両性愛、パンセクシュアルなど、さまざまな形があります。どの性別に対しても、恋愛感情や性的感情を抱かない場合もあります。
LGBT(エルジービーティー)は、「Lesbian(レズビアン)」「Gay(ゲイ)」「Bisexual(バイセクシュアル)」「Trans-gender(トランスジェンダー)」の頭文字をとって名付けられた言葉です。
L…Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)
G…Gay(ゲイ:男性同性愛者)
B…Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)
T…Trans-gender(トランスジェンダー:生まれた時の生物的な性別と、自分の認識している性別が一致していない人)
現在ではこの4つにあたる人々だけでなく、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)全般を指す言葉として使われており、最近では、さらに「LGBTQ+」「LGBTQIA+」という言葉も聞かれるようになりました。
Q…Questioning(クエスチョニング:性自認や性的指向を決められない、迷っている)
I…Intersex(インターセックス:身体的性において男性と女性の両方の性別を有している)
A…Asexual(アセクシャル:どの性にも恋愛感情を抱かない)
そして、これらのセクシュアリティ以外にもさまざまなセクシュアリティがあるという意味で「+」がつけられています。
恋愛感情と性的欲望は必ずしもセットではなく、また「無い」というあり方もあります。
『恋愛感情が湧かないなんておかしいよ』『(男なのに)性的欲望というものがないの?』などという言葉を聞くことがありますが、これらは当事者にとっては受け入れることができず、とても辛い言葉です。悪気がなくても、こういった発言をしてしまうことはよくあります。悪気の有無に関わらず、当事者は精神的な負担を覚えてしまうものです。いままでこのような発言をした覚えのある方は、これからぜひ気を付けてみましょう。
そもそも、セクシュアリティをなぜ分類する必要があるのでしょうか。
「性のあり方はグラデーション」とも言われるくらい、沢山のセクシュアリティの存在が認められている時代。一見、”分類することに何の意味があるのか?”と思うこともあるはずです。
セクシュアリティを分類するメリットには、下記のようなことが挙げられます。
・当事者同士の連帯(つながり)がうまれやすい
・セクシュアリティについての理解を深めやすい
・学術的な研究を深めるうえで有効
その結果、精神的な孤独などから解放されることができた記録があります。一方で、全てのセクシュアリティを細かく分類することは不可能に近く、また意義もあまりありません。重要なのは、自分のセクシュアリティをどう感じているか、そして個々人のセクシュアリティを否定せずに尊重することです。
ちなみにLGBTの割合に関する調査はいくつか行われており、結果にバラつきはあるものの、全人口に対して7~9%の割合で存在しているとされるケースが多いようです。つまり30人規模のクラスや職場であれば、2〜3人程度のセクシュアルマイノリティがいることが容易に想定できるのです。
ここまでは多様な性のあり方の中でも、セクシュアリティ・マイノリティ(性的少数者)の人たちの代表的な分類を紹介してきました。多数派の性のあり方にも呼び名があり、使われる機会も増えてきているので、ここでおさえておきましょう。
・シスジェンダー(Cis gender)…産まれたときの性別と性自認が一致している人
・ヘテロセクシュアル(Heterosexual)…性的指向が異性に向く人
ここまでこの記事を読んできた方はお気づきかもしれませんが、生物学的な性別・性自認・性的指向はそれぞれ別個の要素です。そのため、シスジェンダー=ヘテロセクシュアルではありません。社会的に最も多数派である、”出生時の性別と性自認が一致している異性愛者”は、「シスジェンダー・ヘテロセクシュアル」ということになります。
社会には、”性的指向が異性に向く人こそが「普通」である”と認識している人も多くいます。たしかに性的指向が異性に向く人が世の中の大多数を占めてはいるのですが、そうではない人が「普通ではない」つまり「異常である」ということはありません。
文部科学省は、性的マイノリティに関する施策を充実させるために、教職員向けの研修動画や理解啓発パンフレットの作成・周知を行い、また、学校現場での具体的な対応についても指導提要に追記されています。学校での具体的な取り組みとしては、以下のようなものがあります
教職員向けの研修:LGBTQ+に関する知識を深め、適切な対応方法を学ぶための研修の実施
啓発活動:LGBTQ+に関するポジティブなメッセージを発信し、多様性を尊重する文化を育むための活動
相談窓口の設置:生徒が安心して相談できる環境を整えるための窓口の設置
これらの取り組みにより、LGBTQ+の生徒が安心して学校生活を送れるよう、学校全体での支援が進められています。
教科書に「性の多様性」について記述される傾向は近年増えていますが、小中高校で必修ではなく、授業で取り上げるかどうかは学校によって異なります。ここで、10代が学校生活でリアルに感じたモヤモヤについてご紹介します。
「体育の授業で男子は武道、女子はダンスと決められているが理由が分からない」(17歳)
「泊まり学習に参加したいけど大浴場が嫌で行くか迷った」(18歳)
「卒業式とかなんでも男女で分けられるのがモヤモヤする」(15歳)
『先生がクリスマスやバレンタインデーの時期に男子に冗談っぽい感じで「今年は彼女どうだ?(彼女からもらったか?)」と言うとか。“うちの学校にはセクシャルマイノリティーは存在しない”という空気を感じることがあります。セクシュアリティについて自分と他人は違うんだという理解が広まってほしい。そのために生徒も先生もみんなが当事者の悩みとか思いをしっかり学ぶ場があるといいって思っています』
◆トランスジェンダーであることをカミングアウトした教員の声:
本人がカミングアウトしていなくても、学校が居心地がよくて安心していられる環境になるように、仕組みや制度そのものを変えていかなくてはいけないと思います。まずその大前提として「当事者はいるよね」という視点に立つこと。学校に関わっている人間。そしてその学校を一緒につくっている子どもたちの知識や体験をアップデートしていかなくてはいけない時期に来ているんだと思います。
今回は、多様なセクシュアリティについてご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。セクシュアリティは自分を形作るアイデンティティの一種です。非常に多様で個々人によって異なるもので、正否を判断するものではありません。自分や周りの大切な人たちを理解し尊重するために、「セクシュアリティ」についての知識を正しく知ろうとすることから始めてみませんか。
参考:Spaceship Earth、NHK「虹クロ」