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【職業紹介シリーズ】世界と日本をつなぐ架け橋となる『大使館職員』
2025年11月19日

世界各国にある大使館。そこで働く大使館職員は、国と国との関係を支える重要な役割を担っています。外交官として政治や経済の交渉に携わる人もいれば、ビザの発給や文化交流イベントの企画など、さまざまな業務を通じて国際関係を支える人もいます。
今回は、大使館職員の仕事内容や魅力について詳しくご紹介します。
大使館職員の仕事は、所属する部署によって大きく異なります。
外務省から派遣される外交官は、政治・経済・文化など幅広い分野で相手国との交渉や情報収集を行い、日本の国益を守るために活動します。
領事部門では、海外に住む日本人のパスポートの発給や安全確保、現地の人へのビザ発給業務を担当します。広報文化部門では、日本文化を紹介するイベントの企画・運営や、現地メディアとの連絡調整が中心です。
また事務職員や専門職員として、会計処理、通訳・翻訳、情報管理といった業務を担当する人もいます。大使館は「小さな日本」とも呼ばれ、外交から事務作業まで多岐にわたる業務を通じて、日本の存在感を高める重要な拠点となっています。
大使館職員という職業には、国際舞台で活躍できるやりがいがある一方で、特殊な環境ゆえの困難も存在します。
国際社会で日本を代表できる誇り
大使館職員の最大の魅力は、日本を代表して国際社会で働けることです。外交官として重要な国際会議に参加したり、二国間の友好関係を深めるプロジェクトを推進したり、日本文化を海外に紹介したりと、自分の仕事が直接国と国との関係に影響を与えます。特に、困っている日本人を助けたり、日本への理解を深めてもらえたりした時には、この仕事をしていて良かったと強く実感できるでしょう。また、大使館での勤務経験は、国際的なキャリアにおいて大きな財産となり、自分自身の成長にもつながります。日本の代表としての責任感と誇りを持って働ける、非常にやりがいのある職業です。
多様な文化と価値観に触れられる
大使館職員は、日々さまざまな国籍や文化背景を持つ人々と接する機会があります。外交官として海外勤務をする場合、通常3~4年ごとに世界各国を転勤するため、複数の国の文化や言語、歴史を深く学ぶことができます。アメリカやヨーロッパといった先進国から、アフリカやアジアの発展途上国まで、多彩な赴任先があり、それぞれの国で得られる経験は唯一無二のものです。また、現地の政府関係者や文化人、ビジネスパーソンとの交流を通じて、グローバルな視野と柔軟な思考力が養われます。異文化理解力やコミュニケーション能力が自然と身につく環境です。
専門性を活かしたキャリア構築
大使館での仕事は、単なる事務作業ではなく、高度な専門性が求められる職業です。政治・経済分野の専門知識、語学力、交渉力、分析力などのスキルを磨くことができます。外務省のキャリア外交官であれば、将来的には大使や総領事といった要職に就く可能性もあります。また、国際機関への出向や、民間企業での国際業務経験など、キャリアの選択肢も豊富です。語学力を活かして通訳や翻訳の専門家として活躍する道もあり、自分の興味や適性に合わせて専門分野を深めていくことができます。
国際関係のプロフェッショナルとして、長期的なキャリアを築ける職業です。
24時間365日の緊急対応体制
大使館職員、特に外交官の仕事は、時間や曜日に関係なく緊急対応が求められることがあります。海外で日本人が事件や事故に巻き込まれた場合、深夜や休日でも現地に駆けつけて支援する必要があります。また、テロや自然災害、政変などが発生した際には、日本人の安全確保のために不眠不休で対応することもあります。国際情勢が緊迫している地域では、常に緊張感を持って情報収集や分析を行わなければなりません。プライベートな時間も仕事のことが頭から離れず、家族との時間を十分に取れないこともあります。高い使命感と責任感、そして体力と精神力が求められる厳しい職業です。
頻繁な転勤と生活環境の変化
外交官として働く場合、3~4年ごとに世界各国へ転勤するため、生活環境が大きく変わります。治安が不安定な国や、医療体制が整っていない地域、気候が厳しい場所への赴任もあり、生活面での苦労は少なくありません。子どもがいる家庭では、教育環境の確保や転校の問題もあります。また、配偶者のキャリアが中断されるなど、家族にも大きな負担がかかります。言葉や文化の違いから、現地での生活に馴染むまでに時間がかかることもあり、常に新しい環境に適応し続ける柔軟性とストレス耐性が必要です。長期的に同じ場所に定住したい人には向かない職業と言えるでしょう。
大使館職員になるルートは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、外務省の国家公務員試験(総合職または一般職)に合格して外交官になる道です。総合職試験に合格すると、将来的に大使や公使といった幹部職員を目指すキャリアパスとなり、一般職試験に合格すると、領事業務や広報文化業務などの専門職として働きます。どちらも大学卒業程度の学力が必要で、特に語学力(英語は必須、第二外国語も重要)と国際情勢への深い理解が求められます。
2つ目は、大使館の現地採用職員として働く道です。海外にある日本大使館や、日本にある外国の大使館では、通訳・翻訳、事務補助、広報アシスタントなどの職種で現地採用を行っています。この場合、外務省職員ではありませんが、大使館業務に携わることができます。語学力と専門スキルがあれば、比較的チャレンジしやすいルートです。
必要なスキルとしては、何よりも高い語学力。英語は必須で、TOEIC900点以上、TOEFL100点以上のレベルが望ましいとされています。さらに、赴任先の言語(フランス語、スペイン語、中国語、アラビア語など)も習得する必要があります。また、国際政治や経済、歴史、文化に関する幅広い知識、コミュニケーション能力、問題解決能力も不可欠です。
興味深い事実として、外交官には「外交特権」というものがあり、赴任先の国で外交活動を妨げられないよう保護されています。これは外交活動を円滑に行うための国際ルールですが、同時に高い倫理観と自己管理能力が求められることを意味しています。
大使館職員は、世界を舞台に働きたい、国際社会に貢献したいという強い意志があれば、挑戦する価値は十分にあります。学生の皆さんは、まず英語力を徹底的に磨き、新聞やニュースで国際情勢に関心を持つことから始めてみましょう。また、外務省のホームページでは、若手外交官の体験談や業務内容が詳しく紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。世界中の人々と協力しながら、日本と世界の架け橋となる仕事に、あなたも挑戦してみませんか。


